実験10 CNDO/S法による励起エネルギーの計算

I 実行入力ファイルの作成とプログラムの実行

  1. エチレンの構造最適化

    1. ファイルメニューから「New」を選択する。

    2. sp2ツールを選択し、エチレンを作成する。
    3. Fileメニューから「Save As」を選択する。




  2. 新しいフォルダの設定


    1. MOSF計算を行うために新たなディレクトリを作成する。

    2. 「新しいフォルダ」を「Mosf」と名前を変更する。
    3. 名前を変更した後、そのフォルダをダブルクリックして、ディレクトリを移動する。ファイル名を「ethylene」として保存する。
    4. 「Edit」メニューから「Z-matrix」を選択する。キーワード「PM3 EF PRECISE」を設定した後、「OK」をクリックする。


    5. 「Calculation」メニューから「Start」を選択し、構造最適化を行う。
       

  3. MOFプログラムのキーワードの設定


    1. 構造最適化が終了したのち、「File」ニューから「Save as」を選択し、ファイル名を「ethylene.mos」として保存する。
    2. 「Edit」メニューから、「Z-matrix」を選択する。

    3. MOSFプログラム設定画面で、CNDO/S計算を設定した後、「OK」をクリックしてファイルを保存する。
      (注意)「Comments」欄の入力を忘れないこと。MOPACプログラムは、コメント欄が空白でも実行されるが、Mosfプログラムではエラーになってします。


  4. 計算結果の確認


    1. 「Calculation」メニューから「Start」を選択し、励起エネルギーの計算を行う
    2. 計算が終了したら(画面左下に「MOS-F Normal end」と表示される)、「Information」メニューから「Excited States」を選択する。

    3. 計算された励起エネルギーの数値と、振動子強度を考慮した励起のチャートが現れる。


  5. 計算結果の解析


    1. 励起エネルギーの確認
       エディタまたはワードプロセッサを用いて、計算の出力中(「ファイル名.oms」に出力がある)の、励起エネルギーの部分を確認する。
      Electron transition spectra (G->E) for singlet state. NStates = 10

      eV

      cm^(-1)

      nm

      strength

      MO

      CI coef.

      1

      6.51341

      52534.21

      190.352

      0.447952

      6->7

      -0.95145

      -91%

      2

      7.52324

      60679.01

      164.802

      0

      5->7

      -1.00000

      -100%

      3

      7.58952

      61213.61

      163.362

      0

      6->8

      0.98879

      -98%

      4

      8.806

      71025.13

      140.795

      0

      4->7

      -0.99929

      -100%

      5

      9.19922

      74196.67

      134.777

      0.101922

      6->9

      1.00000

      -100%

      6

      10.60719

      85552.68

      116.887

      0

      6->10

      1.00000

      -100%

      7

      10.90906

      87987.48

      113.653

      0

      6->11

      1.00000

      -100%

      8

      12.13202

      97851.3

      102.196

      0.041343

      5->8

      -0.98095

      -96%

      9

      12.28165

      99058.15

      100.951

      0

      6->12

      0.98879

      -98%

      10

      13.32435

      107468.1

      93.051

      0

      3->7

      1.00000

      -100%


    2. CNDO/S計算結果の最後の表は、左から順に次の情報を示している。
      1. 遷移エネルギー(Transition energy)
        電子ボルト(eV)、波数(cm-1)、波長(nm)の3つの単位で示してある。
      2. 振動子強度(Oscillator strength)
         振動子強度は吸収帯の光吸収強度に比例する量で、ゼロは吸収が観測されないことを、大きい数値は吸収強度が大きいことを意味する。
      3. 主な配置のCI(Configuration Interaction)係数
         「CI配置の係数」では、それぞれの遷移エネルギーが、どの分子軌道からどの分子軌道への遷移に相当するかを、軌道の番号で示している。例えば、6->7は6番目の軌道から7番目の軌道へ一電子励起した配置を示す。
      4. "CI COEF"は、その配置の配置間相互作用計算を行ったときの係数を記している。

  6. 計算結果を用いた実測値の帰属


    1. CNDO/S計算は、振動子強度の大きい190.0 nm(6.51 eV)の吸収を予測している。さらに、この遷移は主として(95%)、6番目の分子軌道から7番目の分子軌道へ電子遷移した電子配置からなっている。
    2. MOの確認「Information」メニューから、「Molecular orbital」を選択する。

    3. 現れたメニューから、6番目の軌道を選択する。
    4. 「Set grid information」の「Size」の値を0.4と設定する。


    5. 「Apply」をクリックすると、エチレンのπ軌道が表示される。
    6. 同様な操作により、7番目の軌道(π*軌道)も表示する。

             π軌道              π*軌道

    7. 以上の計算から、この遷移がπ→π*型の遷移と帰属することができる。


II ピリジンの電子遷移の帰属

  1. PM3法を用いたピリジンの構造最適化
    1. PM3法を用いてピリジンの構造最適化を行う。全ての計算は「Mosf」ディレクトリ内で行う。

    2. 最適化計算が終了した後、「File」メニューから「Save As」を選択する。ファイル名を「pyridine.mos」とする。
    3. 「Edit」メニューから「Z-matrix」を選択し、MOSFプログラムのCNDO/S計算の設定を行う。

    4. 「OK」をクリックしファイルを保存する。
    5. 「Calculation」メニューから「Start」を選択して、励起エネルギーの計算を行う。


  2. 計算結果の確認
    1. エディタまたはワードプロセッサを用いて、計算結果を確認する。出力「pyridine.oms」を確認する。

      State

      Transition

      energy

      Oscillator

      Main

      CSFs

      eV

      cm^(-1)

      nm

      strength

      MO

      CI Coef

      1

      4.01421

      32376.75

      308.864

      0.00618

      13->16

      0.91666

      2

      4.88864

      39429.56

      253.617

      0.073698

      15->16

      -0.86639

      14->17

      -0.49554

      3

      5.49711

      44337.18

      225.544

      0

      13->17

      -0.98893

      4

      5.81793

      46924.75

      213.107

      0.142056

      15->17

      -0.91632

      5

      6.6035

      53260.77

      187.755

      0.747294

      14->16

      -0.90388

      6

      6.67544

      53841.04

      185.732

      0.909765

      14->17

      0.84707

      15->16

      -0.46970


    2. 「Information」メニューから「Excited States」を選択する。

    3. 励起エネルギーのチャートが表示される。計算値と、その位置を確認する。

  3. 分子軌道の確認と遷移の帰属

    1. Information」メニューから、「Molecular Orbitals」を選択する。

    2. 15番目の軌道を選択し、「Set grid information」を0.4に設定する。



    3. 「Apply」をクリックし、分子軌道の等電子密度面の表示を行う。

    4. MO13、14、16、17に対して、選択、「Apply」のクリックをくり返し、これらの軌道を表示させる。

    5. ピリジンの分子軌道は、13〜15が被占軌道で、16、17は空軌道である。

    6. これらの軌道を以下に図示した。この図から、軌道13は窒素原子上に大きな軌道係数をもつ孤立電子対の、軌道14、15はピリジン環のπ軌道の特徴を持った軌道であることがわかる。


               No.13               No.14 N          o.15


    7. 軌道16、17はπ*軌道と考えられる。



         No.16          No.17

    8. 計算値及び分子軌道の図を参考にして、実測された遷移を帰属せよ。


III ポリエンの励起エネルギーの計算値と実測値の相関関係

  1. 励起エネルギーの計算


    1. 1,3-ブタジエン、1,3,5-ヘキサトリエン、1,3,5,7-オクタテトラエン、1,3,5,7,9-デカペンタエンのトランス構造をPM3法で最適化する。




    2. 最適化された構造を用いてCNDO/S法で励起エネルギーを計算する。


  2. 計算値の整理
     計算結果はFile.omsに入っていので、それをエディタで開き計算値を抜き出す。計算値と実測値を表にまとめた。

    ポリエン

    実測値

    溶媒 

    CNDO/S(振動子強度)

    λmax /nm(log ε)

    エチレン

    162(3.8)

    気体

    190.4(0.448)

    1,3-ブタジエン

    216.5(4.62)

    気体

    234.4(0.949)

    1,3,5-ヘキサトリエン

    266(4.21)

    C6H14

    259.3(1.368)

    1,3,5,7-オクタテトラエン

    304(4.5)

    C6H14

    292.4(1.749)

    1,3,5,7,9-デカペンタエン

    334(5.08)

    i-C8H18

    322.8(2.119)


  3. 計算値と実測値の相関関係
    1. グラフソフトを用いると、計算値と実測値の関係をつぎのようにグラフ化することができる。



      ポリエンの吸収波長の実測値と計算値の関係

    2. 実測値と計算値に対して、次のような相関式が得られる。

      λ (obsd)=-17.8 + 1.11λ(calcd)