B112    DNADNA蛍光色素の作用機構に関する理論的研究

 

分子反応システム工学研究室 青田 光世

 

1 代表的な蛍光色素

(a)Hoechst 33258, 33242  (b)DAPI

2 MO計算を用いたDNAの計算方法

3 (a)DNAの最適構造,(b)蛍光色素を有するDNAの最適構造

1.緒言 現在DNAが関与する生化学的なプロセスを研究するには、DNAと特異的に相互作用する蛍光色素が重要な役割を果たしている。これまでの理論的研究では、計算量の少ない分子動力学(MD)計算が主に使われてきた。しかしながらこの方法では、DNA鎖と蛍光色素間の相互作用の細かな解析を行うのが困難である。分子軌道(MO)計算はそれが可能であるが、計算量が膨大な為これまでほとんど行われていなかった。そこで本研究では、図1に示す代表的な蛍光色素とDNA間の相互作用機構の解析を、MO計算を用いて行う方法を開発すると共に、MO計算に基づいて相互作用機構を明らかにすることを目的とした。

2.計算方法 計算精度の比較を行う為、塩基のみ及びヌクレオチドの対構造の最適化を分子力学(MM)、半経験的MO、密度汎関数計算で行った。更に、DNAの最安定構造の検索にはMD計算(MM3)を、その初期構造を用いた構造最適化をMM計算(MM3)MO計算(MOPAC PM3 MOZYME)より行った。

3.結果と考察 これまでのMO計算を用いた構造最適化では、塩基対間の水素結合を保つことができなかった。図2に示す本研究で開発した方法を、DNA 10量体の2重らせん構造に適用した。その手順では、(1)PDBファイルを読み込み分子の修正を行い、(2)MD計算で最安定構造を検索、(3)MO計算(MOPAC AM1 MOZYME)で一点計算することにより部分電荷を入力、(4)MM計算で構造最適化した後、(5)MO計算で構造最適化する。この時、5'及び3'末端の塩基対を架橋し、リン酸のアニオン酸素をプロトンでキャップして最適化を行った。この方法により得られた、塩基対の水素結合が保たれた構造を図3に示す。

すなわちPM3ハミルトニアンを用いたMOZYME法によるMO計算でDNAの構造最適化が可能であり、また同様の方法により蛍光色素を有するDNAの最適構造も得られる。これらの結果を用いると、DNA-蛍光色素錯体の相互作用機構の解析が可能となる。