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非経験的分子軌道計算結果の統計論的解析によるラジカルリビング重合のMw/Mnの傾向予測

○坂本誠1、堀憲次2

1山口大学大学院理工学研究科(755-8611宇部市常盤台2丁目161)

2山口大学工学部応用化学工学科(755-8611宇部市常盤台2丁目161)

【緒言】

 ラジカルリビング重合は、可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)剤としてN,N-二置換または環状のdithiocarbamateを用いることにより、Mw/Mnを狭い範囲で制御することが可能である。即ち、図1に示したRAFT剤のN置換基の構造の違いにより、制御できるモノマーの種類や生成したポリマーのMw/Mnの範囲が変化する。そこで本研究では、非経験的分子軌道計算結果を統計論的に解析することにより、Mw/Mnを決定する因子を見出すと共に、ethyl acrylate(EA)のラジカルリビング重合のMw/Mn制御に適したRAFT剤に関して理論的な検討を行った。

 

1 多変量解析に用いた反応

【計算方法】

 RAFT剤を用いる反応において実験条件のそろっている例について、反応中間体として考えられるAGPM5,B3LYP/6-31G(d)レベルで構造最適化した。計算により得られた反応エネルギーとMw/MnPLS法を用いて解析を行い、予測式を得た。このとき、ABに付加しラジカルCが生成する時の安定化エネルギーをE1CDとラジカルEに開裂する時の不安定化エネルギーをE2DFが付加してラジカルGが生成する時の安定化エネルギーをE3とした。

 

2 E1,E3を用いたPLS解析結果

【結果と考察】

実際に実験のあるRAFT剤に対して得られたMw/Mnを目的変数に、計算値(E1E3又はΔE12=E1-E2E3)を説明変数にした多変量解析を行ったところ、実測されたMw/Mnは図2の様にE1,E3を用いてモデル化された。ラジカルリビング重合では、ラジカル中間体の安定性が重要であるため、開始反応と成長反応により生成するラジカルC,Gが関係するこれらのエネルギーと相関を示したと考えられる。Mw/Mn制御が悪いRAFTのラジカル構造CCS2N部分が平面構造をとると計算された。この構造では図3の半占軌道(SOMO)で示すように、C-N間の相互作用によりラジカルが非局在化している。一方、Mw/Mn制御が良いラジカル構造CS-C-S面と2つのN-σ軌道が傾いた構造で最適化された。この構造では、S-C-S部分のπ軌道と2つのσ軌道の相互作用により、ラジカルは非局在化が可能になっている。またNに隣接する炭素のカルボニル基とCS2部分の立体的反発がラジカルの安定性に大きく影響していると考えられる。

3 Mw/Mn制御の悪いRAFTのラジカルのSOMO

参考文献

M.Destarac,D.Chamot,X.Franck,S.Z.Zard  Macromol. Rapid Commun. 2000,1035-1039