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遷移状態データベースVI

PM3計算結果の密度汎関数計算への自動変換・登録システムの開発−

     山口 徹1, 堀 憲次2

山口大学大学院理工学研究科(〒755-8611 山口県宇部市常盤台2丁目16番1号),
2山口大学工学部応用化学工学科(〒755-8611 山口県宇部市常盤台2丁目16番1号)


【緒言】

 我々はこれまで合成経路設計に遷移状態データベース(TSDB)[1]をどのように利用するかの検討を行ってきた。その結果、TSDBを実践的に使用して行くためには、やはり遷移状態データの計算・収集が不可欠であることが確認された。また、TSDBによる合成経路設計の容易さのランキングや絞り込みを高精度で行うためには、密度汎関数理論(DFT)計算やab initio MO計算による計算結果が不可欠であることも判明した。

遷移状態データの計算はその複雑さからしばしば多大な時間を要する作業となる。また、精度の高いDFT計算には、さらに多くの時間を必要とする。このことから我々は、比較的計算時間の短いPM3法により遷移状態の計算を行い、その結果を用いた計算により精度を高めたデータの収集を行っている。しかしながら、これにもまた多大な計算時間が必要となるだけでなく、データ収集・登録者への負担も大きい。そこで、本研究では、PM3法計算結果を自動的に読み込み、DFT計算に変換・登録するシステム『Auto_PTOD(An Automatic transformation system from PM3 to DFT geometries) 』の開発を行った。システムの概要をFig.1に示す。

Auto_PTOD Gridの開発】

 PM3法計算結果をDFT計算結果に自動的に変換するためには、DFT計算の自動化を行う必要がある。そこで、計算の自動化を行うためのプラットホームとなるGaussian用Grid計算システム『Auto_PTOD Grid』の開発を行った。このシステムを用いることで、計算者は、通常のGaussianによる計算と同じ手続きで、意識することなくGrid計算を行うことができる。これによりコンピュータ資源使用の効率化を図ることが可能となった。

Auto_PTOD TSLB Wrapperの開発】

 上記Gridシステムと併せて、『Auto_PTOD TSLB(TS Library) Wrapper』の開発も行った。このシステムは、UNIXのcronプログラムにより一日一回起動され、TSLB中のデータを調査し、新たに追加されたPM3法計算結果データに対して、Gridを利用しDFT計算結果への変換を行う。これにより、TSLB中のPM3法計算結果を自動的に読み込み、DFT計算の入力に変換、計算、登録することが可能となった。

【総括】

 今回の研究により、TSLB中のPM3法計算結果データを自動的に精度の高いDFT計算結果に変換し、DFT計算結果データとしてTSLBに登録することが可能となった。これにより、データ登録者の負担の軽減を図ることができる。さらに、TSLBの精度を常に高く保つことができるようになり、TSDBがより実践的に使えるものに近づいたと言うことができる。

 

テキスト ボックス: Fig.1 Auto_PTODのシステム概要[1] 堀憲次、計算化学と情報化学を融合した合成経路開発システム、ファインケミカル、32No.6, 17 (2003).